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星槎道都大学と北広島市SKYスクールの挑戦〜

教わる側から教える側へ — 学生アスリートの新たな挑戦

北海道北広島市の澄んだ空気の中、星槎道都大学のキャンパスから車で数分の体育館。そこでは毎週、大学生と地域の子どもたちが汗を流す光景が広がっています。バスケットボールのドリブル音とシューズが床を擦る音、そして子どもたちの歓声が体育館に響き渡ります。

「もっと低く!そう、いいぞ!」


経営学部3年生の小熊桃華コーチが小学生に熱心にドリブル指導をする姿がありました。彼女の隣では2年生の奈良心海コーチが、中学生に正確なシュートフォームを教えています。二人とも秋田県の名門・湯沢翔北高校出身の現役プレイヤーです。

彼女たちは今日も自分たちの練習終了後、この地域の体育館へと足を運びました。「教えることで自分も成長する」という高橋コーチの理念のもと、星槎道都大学女子バスケットボール部と北広島市を拠点とする特定非営利活動法人SKYスクールが連携して行う地域貢献活動の一環です。

部活動の地域移行という社会課題に挑む先進的取組み

近年、日本全国で中学校部活動の地域移行が喫緊の課題となっています。教員の過重労働や少子化による部活動の存続危機など、これまでの部活動システムは大きな岐路に立たされています。

北広島市もその例外ではありません。多くの保護者やバスケットボール関係者から「子どもたちにバスケットボールを教えてくれる指導者が不足している」という声が上がっていました。

そんな地域の課題に、星槎道都大学が解決策を提案しました。男女バスケットボール部の部員が2人1組で10週間のローテーションを組み、小中学生にクリニック活動を行うという画期的な取り組みです。さらに注目すべきは、この活動が学生にとっても大きな学びの場となっていることです。

大学側はこの活動を「メジャー/サブメジャー・プログラム」として正式に認定。学生たちは単位を取得しながら、実践的な指導経験を積むことができるのです。


選手とコーチ— 視点の転換がもたらす成長

「最初は本当に難しかったです」と

小熊 桃華コーチ 経営学部 3年生 と奈良 心海コーチ 経営学部 2年生は振り返ります。「自分ができることを教えるのは簡単だと思っていたんですが、相手の理解度や性格に合わせて言葉を選び、適切な指導をすることの難しさを痛感しました」秋田県の強豪校で培った高い技術を持つ小熊コーチと奈良コーチですが、それを子どもたちに伝えることは想像以上に困難だったと言います。高橋コーチとの協働で、彼女たちは徐々にコミュニケーション能力を高め、効果的な指導法を身につけていきました。


星槎道都大学女子バスケットボール部では、選手たちに大学在学中にコーチライセンスと審判ライセンスの取得を必須としています。これは選手としての視点だけでなく、コーチ、審判、TOなど、バスケットボールにおける多角的な視点を養うためが目的。

「バスケットボールを『する』だけでなく、『教える』『判定する』『運営する』など、様々な角度から競技と向き合うことで、競技そのものへの理解が深まります」と高橋コーチは語ります。


地域の子どもたちの成長と夢

高力もなみさん(中3) 中学総体で引退した後もバスケットボールへの情熱を失わず、このクラブに通い続けています。4月からは札幌市の高校に進学し、そこでもバスケットボールを続ける予定だといいます。

「星槎道都大学の学生コーチは、分からないところも丁寧に教えてくれるので、納得しながら練習できるんです。そのおかげでバスケットボールがさらに楽しくなりました」と高力さんは笑顔で話します。






西川元道さん(中1) 「学生コーチが言葉で説明するだけでなく、実際にプレーの見本を見せてくれるので、もっと上手になりたいという気持ちが湧いてきます」と目を輝かせます。「分からないときに質問しても、優しく教えてくれるので本当に感謝しています。将来は自分も大学でバスケットボールがしたいです」と笑顔いっぱいに夢を語ってくれました。







地域と大学の共生がもたらす未来

取材を通じて感じたのは、この活動が地域と大学が有機的に結びついた共生関係を築いているということです。大学生は実践的な指導経験を得て、子どもたちは質の高い指導を受けられる。地域社会は部活動の地域移行という課題に対する一つの解決モデルを手に入れる。まさに三方良しの関係が構築されているのです。

高橋コーチは「バスケットボールを通じて、学生たちには競技の技術にプラスして、「人を育てる喜びや責任感を学んでほしい」と語ります。「そして何より、彼らが卒業後や引退後にバスケットボールのコートのみでなく、学び続ける姿勢とリーダシップを仕事を通じた地域経済での活躍、地域の子ども達に還元していってほしい」と期待を寄せています。

北広島市に根付きつつあるこの取り組みは、日本全国で課題となっている部活動の地域移行にモデルケースといえるでしょう。点と点が線となり、さらに面へと広がっていく。星槎道都大学男女バスケットボール部、特定非営利活動法人SKYスクール、そして北広島市の連携は、指導者不足という課題を解決しながら、地域の子どもたちにバスケットボールの灯を絶やさない共生社会の象徴となっています。

大学と地域が手を取り合い、スポーツの力で未来を切り開く。北広島市にある大曲ファミリー体育館から始まったこの挑戦が、今後どのように発展していくのか。その行方から目が離せません。

(取材・文:リクルート兼進路サポート:柴田祥悦)

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